就活を雑に振り返る

 

令和最初の夏にブログを更新する

令和最初の夏が来た.学生生活最後の夏である.

この夏の為に資金を蓄えておきたい所であったが,今年の前半期は就活と研究のダブルパンチで労働に精神を割く余裕が無く,結局懐が寂しい状況のまま夏季休暇が始まった.年金の支払い,就活の交通費,ストレス発散の為の遊興等で思った以上に出費がかさんでしまった.資金が無ければ今後にも響くので,短期バイトに数社応募したりみてはいるが,どうなるのかは不明である.

うだるような暑さと精神的不調のせいか,ベッドに身体を横たえてからも中々眠りに就けない.酒を飲んで頭を曖昧にし,明け方頃にようやく寝付く.そして設定したエアコンのタイマーが切れる昼前まで死んだように眠り,起床後,抑鬱気分が酷い時にはベッドに寝転んだ状態で天井を見上げるだのスマートフォンを雑に眺めたりして3時間程度ひたすら時間を浪費しているが,それ以外は基本的に図書館と研究室と自宅を往復する感じの日々を送っている.

修論を完成させねばという強迫観念が頭から離れない.しかしながらその割には研究に集中出来ていない.先が何も見えない.砂場に手を突っ込み,延々と手で砂粒を揉んでいる状況である.指導教官からダメ出しを頂戴し,自分という人間が目指すべき場所は,結局の所,研究ではなく創作にあるのではないかという漠然とした気付きを得つつあり,研究に対峙する自己の姿勢そのものに疑問を抱くという地獄に陥っている.焦り,ただ焦りがある.

ちなみに筆者の昨年の夏は以下のような感じであった.読み直す気は起きない.

atamaganai.hatenablog.jp

さて,このように呑気かつ雑に夏季休暇をやり過ごせているのは,就活に終止符を打つ事が出来たが故である.内定先を獲得してから,場合によっては夏季休暇中も就活を継続させようかと考えていた時期もあったが,元々の就活のモチベーションの低さも相まって,結局やらずじまいで終わった.とはいえ,就活の結果に関しては十分納得がいく結果が出たように思う.

以下,筆者の就活をごくごく雑に振り返ってみたい.筆者のスペック,そして大まかな就活の流れを示した後に,就活に関する雑感を書き記す.どなたかの参考なり気休めになれば,筆者としては嬉しい限りである.

 

筆者のスペック

・23歳,non-binary,文系院生(人文系)

・MBTIの判定は毎度INTP

・精神年齢の老けを指摘されがち

・口下手

・協調性の乏しさに自信あり

チョコモナカジャンボをよく食べる

・尖った靴を履く男とピータンが苦手

 

就活の流れ

・昨年末から就活の情報収集を開始

インターンシップへの参加,OB訪問の経験なし

・突然ピアスを開けまくり,髪を刈り上げにする

・就活市場解禁の3月に20社程度エントリーを開始

・志望業界は,公務員・団体職員系

・5月末内定

  学部時代,院生就活のスケジュールの多忙さも視野に入れた上で,プレ就活・社会経験の一環にでもなればと思い,民間就活を多少齧っていた.その為,就活に関してはM1の秋頃から考え始めようという程度の認識しか持ち合わせていなかった.

志望業界は上記のものに絞った.コンサルやマスコミといった業界に就職し,猛スピードで社会を回す虚無感に耐えられる気質が自分に備わっているとは到底思えず,私生活と仕事のメリハリに焦点を置く事が出来るかどうかに一番の焦点を置いた形で,志望業種を選択した.身内に公務員もしくは民間から公務員への転向者が多く,彼らから話を聞く中で,自分のメンタリティは民間向きでないと判断した部分が大きかったように思える.公平公正性,ある意味ではシステマティックな冷徹さ,非人間性が要請される職業理念の下で動く方が,自分の精神にとっては毛羽が立ちにくいのかもしれない.そんな事を考えてみたりもした.

就活生という立場であるにも拘わらず,ピアスや刈り上げといった,就活生として到底あるまじき行為に衝動的に走らざるを得なかったのは,就活で要請される規範と筆者自身の性自認との間で生じる摩擦の影響であったように思われる.摩擦で生じる熱を逃す場を,自分の身体の何処かに設けておかねば潰されそうだった.負けたくなかった.

就活中は,なんとか正規職に就かねば,ここまで自分に長々と教育投資をしてくれた両親に対して合わせる顔が無いというプレッシャー,社会に対する諦念,そして自らの性自認への怒り,という三つ巴のせいで精神が殆どキていた.就活の合間に,ドトールで煙草を吸いながら,擦り切れた就活カバンに放り込んできた田辺元やらマラルメやらを捲っていると,「わたしがやりたい事はこんな事じゃねえのにな」という自嘲の念が沸々と込み上げ,世界がヘンに明るく歪んで見えた.

エントリー数としては20社程度であったように思う.選考を中途辞退した企業も数知れない.もちろん仮病も使った.ES,適性検査,面接,GD等々一通りは経験したが,全体の傾向としては最終面接前で落とされるケースが多かったように思う.祈り,そして祈られた.就活という不条理は「神」の変種であり,そしてリクルートスーツを着こなす「わたし」という存在は,神に対して「なぜ」という問いをギャアギャアと喚き続ける義人ヨブの百番煎じであり,世界はこれからも飽きもせずに無数のヨブモドキを産出し続けるかと思うと,無性に笑いが止まらなくなった.

何だかんだ愚痴を吐きながら就活を続けた結果,自分の希望条件にきわめて適合した職場から内定を頂戴する事が出来,あれこれ迷いに迷い,最終的にいまの形に落ち着いたという感じである.以上.

 

就活の雑感

さて,これまでは筆者自身の就活の経歴を雑に振り返ってみたが,ここからはもう少し「文系院生」という社会的立場を意識した形で,就活の雑感を述べる事にしたい.なお,以下「文系院生」と表記しているものは文系院生修士課程を指す.

一般に,学部生と比較した場合,文系院生の就活は厳しいという論調がある.

だが,思うに,就活市場において文系院生という社会的立場が不利に働くかどうかは正直定かではない.何にせよ企業への採用希望者の総数において文系院生の割合はごく少数派を占めており,企業側も文系院生の扱いそのものやそのスキルの価値判断に不慣れである可能性が高いからである.あくまで就活の場で問われるのは,学部卒,院卒,既卒関係なく,個人の力量そのものであり,文系院生という社会的立場そのものが人材の市場価値を大きく左右するかどうかは未知数である.

ただ,学生を人的資本という観点から捉え直した場合,文系院生の就活に関しては多少懸念すべき点があるのではなかろうか.まず,就活市場での優先採用順位について考えてみよう.就活はあくまで個人戦であるという点は明記しておくが,内定獲得に影響を及ぼし得る潜在的な要素として,各人の学歴・社会的立場を考慮に入れた場合,試しに以下の案を示してみたい.もちろんこの順位に関しては,各々の専攻している学問の差異に起因する部分も大きいと思われるが,今回は立ち入らない.また,学部卒の文理区分に関しても同様である.

学部卒・男≒理系院生・男>学部卒・女≒理系院生・女>文系院生・男>文系院生・女

上記順位付けの基準の第一が,性別である.

就活戦線において,女性は男性よりも不利な条件を負わされ得ると考えられる.なぜなら,企業側の立場から捉えれば,結婚や出産,配偶者の転勤に伴う女性特有のライフステージの変化を考慮した場合に,男性よりも女性の方が人的資本としてのリスク管理が難しいからである.

いくら男女平等社会の実現を目指す施策が社内レベルで採用されようが,この点は変化し得ないであろう.我々は単なる人的資本に過ぎない.自社に長く勤め,効率的に利潤を生みだす事を妨げる要素を保有しているものはリスク管理の見地から敬遠される.その要素の筆頭として挙げられるものが社会的・生物学的差異としての「女」である事は否定し難い.

だからこそ,女性特有の人的資本としてのリスクの高さを逆手に取り,総合職としてバリバリと男性同等のキャリア構築に勤しむのではなく,あえて一般職を目指す事でライフワークバランスの充実を図る戦略を取る女性陣も一定数存在するのであろう.女性にとって総合職と一般職のどちらが望ましいのかは,各人の人生観なり幸福感なり女性というモデルへの適合具合によって大きく左右されるものであろうし,筆者が口を挟むべき観点ではない.各人が各人なりの幸福を胸に抱ける社会が到来しますように.アーメン.

そして第二に,学部卒と院卒の区分が挙げられる.両者の間には,当然給与額の差が発生する.院生が修士二年間というごく限られた時間で身に付けたスキルを,学部卒との対比を意識しながら,企業側に対して明白に可視化・数値化した形で示す事は正直きわめて厳しい.特に企業の求める「即戦力」に転化しにくい性質の学問であればあるほど猶更であろう.文系院生,人文系,ああ…….

「大学出のピチピチした兄ちゃん姉ちゃんに比べて,ヘンに年食って頭でっかちの君ら院生にはあえて多くの給与を払わなアカン.更に君らは社会人経験も二年間の遅れを取っているワケで,その間の教育コストも更に負担せなアカン.そこまでを加味した上で,君らを雇うメリットはあるんか?」

という感じで採用担当者からブン殴られた場合,院生は,その中でも特に「社会的生産性」なるものに違和感を抱きがちな方の文系院生は,採用担当者をブン殴り返す強固なロジックを構築する事を意識せねばならないであろう.具体的かつ印象的に,ディズニーランドのキャストの如く明るく元気よくハキハキと,そして協調性の高さをフル演出せねば,就活市場にて潰される可能性は高まると思われる.実際筆者自身が上記の試みを実践に移せたかは定かではない.

 以上を踏まえた上で,就活の雑感を更に雑にまとめよう.

少数派であれ,多数派であれ,就活というフィールドで戦う上ではみな同士である.しかしながら,自分が少数派に属する場合,多数派に対して適用される価値判断の枠組みに対し,どういった態度で行動すべきか,という点を絶えず問い続ける事が肝要になるであろう.枠組みにノるべき時にはノリノリでノってもよい.あえてハズして差異化を試みるのも悪かない.こうした一連の戦略をどのように組むのか.そこがまさに少数派にとっての腕の魅せ所である.

就活を終えたみなさん,ほんとうにお疲れ様.就活を継続しているみなさん,自分を信じればきっと道は拓けます.これから就活をするみなさん,地獄へようこそ.

鈴と,小鳥と,それからわたし,みんなちがって,みんないい.おわり.